普通のサラリーマンであれば消費者金融に100万円の
借金があると返済は厳しいという話がありますが
その根拠ははっきりしません。
そこで、借り癖のあるサラリーマンを例にして、
具体的に数字をあげながら検証してみます。
登場してもらうのは斉藤君(27)です。
まず、彼の個人情報を公開しておきます。
サラリーマン6年目、一人暮らしで、交際中の女性が1人いて、趣味がパチスロ。
彼の収入は月の手取り額20万円、ボーナスの手取り50万円×2回となっています。
つまり、実質的に自由に使えるのは340万円。
なお、不況の影響を受け、斉藤君の昇給率は0%。
斉藤君の月の家計簿は、
家賃7万円、食費6万円、通信費1,5万円、
光熱費2万円、タバコ代1万円、移動費0,5万円、
交際費4万円、パチスロ代4万円で合計26万円。
これ以外に年間にいくつかのイベントがあり、
結婚式or葬式5万円、スーツ新調10万円、
帰省5万円、旅行8万円で合計28万円の出費があります。
毎月の赤字6万円×12か月=72万円と
年間のイベント合計28万円については、
ボーナス合計100万円で補っています。
ということで、斉藤君は月給、ボーナスをきれいに使い切るわけです。
ここで斉藤君がギャンブルや交際費、
そしてそれを穴埋めするための借金利息などで
5年間に総額250万円の借金をつくってしまったと仮定しましょう。
内訳は銀行1社100万円、クレジット会社1社50万円、消費者金融2社各50万円。
斉藤君は前述のとおり、収入はすべて使い切っており、余裕は1円もありません。
そのため、借金を返そうということになると、家計を見直す必要があります。
斉藤君の家計簿を見て減らせそうなのは、まずは交際費。
この内訳は仕事上の接待費(自腹)と交際相手とのデート代です。
ところが、接待費は営業成績や出世に響くので削ることはできないのです。
また、デートも週に一度のことであり、近い将来に結婚を考えているため削りにくい。
もちろん、彼女には借金のことは一切話すことができません。
次に、パチスロ代ですが、これは趣味というよりは中毒。
そのため、かなり強い意志を必要とするが、
やめれば4万円減らせます。
4万円×12か月=48万円です。
さらに、年に1回の最大の楽しみである彼女との旅行費用8万円を削り、
スーツ新調費用の5万円を削るとこれで13万円が浮きます。
つまり、年間61万円を捻出することができるのです。
これで総額250万円の借金は返済できるでしょうか?
金利は、銀行とクレジット会社がそれぞれ年利18%、
消費者金融が年利29.2%(昔の例) だったとします。
斉藤君の場合、仮に、元金を1円も返さず利息だけを支払ったとすれば、
150万円×0,180+100万円×0,292=56.2円が年間利息となります。
せっかく捻出した61万円は意味がありません。
実は、斉藤君毎月の家計簿をもう一度よく見直してみると
パチスロをやめたとしても月に2万円の赤字になっていることが分かります。
そのため、ボーナス月がくるまでは、借金の利息も払えない状態にあるのですが、
食費を削るなどとして、毎月の赤字を解消したとします。
斉藤君が4月に借金を返すことを決意すると、
7月のボーナスをもらうまでの3か月間は返済資金を借りる必要があります。
銀行のローンでお金を作るか、
クレジットカードでキャッシングをするなどしなければなりません。
その分、余計な利息も必要になり、この3か月間は、
借金を返済するどころか、借金が借金を呼び、
むしろ借金が膨らんでいます。
「借金スパイラル」です。
計算してみると、
4,5,6、月の3カ月間の斉藤君の支払額は、
消費者金融が借入金額スライドリボルビング方式だとすると、
借入金額が各50万円であれば1,6万円が最低返済額となり、2社で3,2万円です。
銀行とクレジット会社ともに元利均等法式とすると、
借入金額100万円の銀行が2,5万円、借入金額50万円のクレジットが約1,3万円となります。
つまり、最低支払い額の総額は7万円で、借金のための借金は3カ月間で約21万円が必要となるのです。
7月のボーナスを全額返済に向けたとしても、返済のための借金を差し引くと、22万円しか残りません。
すると8,9,10月は支払いが可能だが、11月は支払い不可能で、返済のため6万円の借金を重ねることに。
次の12月のボーナスをは50万円だが、6万円と7万円を引くと37万円。
すると翌5月までの支払いは可能だが、翌6月ぶんは5万円足りないということに陥ります。
まさに自転車操業。
結局、1年目は家計簿を見直して毎月の生活費は20万以内に押さえ、
なおかつイベントはあきらめる必要があります。
しかし、2年目からの7月のボーナスをもらってからは
毎月の最低支払い額7万円は借金を重ねずに返済できるようになり、
月の収支がマイナスになることはありません。
大まかにいって、2年目の7月以降は、
年間20万までの金なら返済以外に自由に使えるようになります。
もちろん、返済にまわしてもいいでしょうが、斉藤君ぐらいの浪費癖ある人がなら、
ここでやっとひと息つく余裕が出てきたというところでしょう。
年間20万といっても月当たりたったの1,6万です。
まぁ、5年間はこんな状況が続きます。
この斉藤君のケースを見ると分かりますが、250万円の借金があると返済はかなり苦しいです。
いや実際は、斉藤君のように生活をあらためて、ちゃんと返済できる人は珍しいかもしれません。
返済の途中でパチスロに手を出してしまったり、イベントを行ったりして借金を増やしてしまう可能性が非常に高いです。
ちなみに概算ですが、返済期間を5年間とするなら、このほかに年利20%の消費者金融から借り入れた場合、
斉藤君の返済可能である借金総額は300~350万のあたり。それ以上に借り入れると完済はまず無理となります。
我々は数千万円を借り入れられる年利数%の住宅ローンのことが頭にあるため、
4,5百万の借金があってもなんとかなるような幻想を抱いてしまいがちです。
しかし、利息制限法の利息制限である20%近い年利の消費者金融、
利息制限法の上限である18%(10万円以上100万円未満)の年利をとる
銀行やクレジットの融資は生やさしいものではありません。
しっかりと計画を立てて利用しましょう。
「少額を借りてすぐ返済」を心がけると良いでしょう。